リーベルマンの言うことには
この方法は、腕の弛緩ばかりではなく、手のかまえもすべて取る、というそのことが大切です。
これは音から入るからできることであり、いわゆる奏法から入ると、完全弛緩は得られないのです。
それゆえ、リーベルマン著・林万里子訳の『現代ピアノ演奏テクニック(音楽之友社)』のような、よく書かれた本ではあっても、基本の奏法に関する部分やその訓練方法は、弾くこと主体の動きのメトードゆえ、「音」から入る『頭で弾く』奏法とは相入れないこととなります。
ピアノのタッチとは、頭からの指令が指先にはたらいてタッチをつくっていきます。
その感覚の養成には、つねに頭をはたらかせ、積極的に頭と指先との正しい関係をつくっていくことしかないのです。
しかし、リーベルマンは演奏テクニックの基礎において、こんなことを述べています。
『現代の演奏テクニックの基磯なるのは、いわゆる(ピアノ)タッチである。
ここでタッチというのは、指先を通して自由に動かされる手と、鍵盤との間の連続的な結合の感覚を意味する。
言いかえると、これは手全体を鍵盤において「動かせる」こと、自由な手の重みを用いて音を作り出せることである』。
そのためは、『指が鍵盤を支えている感覚なしには実現できない』と、その基礎の重大さが述べられています。
そして『自由な手により鍵盤を支える感覚を失わないようにして、生徒に強靱な指の打鍵法を学びとらせること』の方法が書かれていますが、この方法は、腕の重みを指先にかけることによって、腕の力を抜きながら腕全体の音を出させるためにはよい方法です。
とくに堅くなった腕を、指とともにはたらかせるには大変効果があります。
しかしこれは内部からの弛緩、ここでいう完全弛緩とは似て非なるもの、つまりつくられた弛緩なのです。